競馬場によって野芝と洋芝(札幌・函館)があるようですが、これらの芝はどんな違いがあるんですか?
また、これがレース中の馬の走りにどんな違いが出るんですか?
競馬のことを知ってくると、「どうやら競馬場によって”洋芝”と”野芝”なるものがあるらしい」ということが分かってきます。
なんとなく、洋芝は時計がかかって(タイムが遅くなる)野芝は時計がかからない(タイムが速くなる)という話は聞くけど、実際何がどう違うのでしょうか?
その違いがレースにどんな影響を与えるのかを知っていれば、競馬予想の精度やレベルを上げられると思いませんか?
そこでこの記事では、競馬場の「洋芝と野芝の違い」について解説していきます。
ぜひ、あなたの競馬予想にお役立てください。
札幌と函館がオール洋芝の理由
なぜ札幌と函館だけがオール洋芝なのでしょうか?
その答えは、一言で表せば”寒いから”です。
函館同様、芝コースが「オール洋芝」であることも札幌競馬場の特徴のひとつ。洋芝は北海道以外の競馬場のベースに使われている野芝に比べ、寒冷な気候に強い、芝のマット層による保水性が高い、耐久性はやや見劣るなどの特性を持つ。品種の違いに由来してか、野芝がベースの競馬場より走破時計は若干、遅くなりがち。少し時計がかかる馬場や北海道の芝コースを得意にしている“洋芝巧者”は、近走の成績によらず警戒が必要だ。
もっとも、札幌の芝コースは水はけが抜群で、馬場状態が重になることは滅多になく、不良にいたってはこれまでなったことがない。路盤構造や開催時期の違いも背景にあるとはいえ、同じ洋芝馬場でも「函館ほど雨の影響は受けにくい」ことは覚えておきたい。
引用元:札幌競馬場コース紹介/JRA
洋芝は、一般的には西洋芝と呼ばれていて暖地型と寒地型があります。
北海道の冷涼な気候で使われるのは寒地型で、関東より南で育てるのは難しい品種です。
寒さに強く、冬でも青い芝生を保てて、低い気温の下でよく育ち、暑さに弱い性質を持っています。
寒地型の洋芝には、ベントグラス類・ブルーグラス類・フェスク類・ライグラス類があります。
札幌と函館で使われている洋芝はケンタッキーブルーグラス・トールフェスク・ペレニアルライグラスの3種類と言われています。
冷涼地に適していて、世界で最も広く栽培されている芝生で北海道でもよく使われている。
病害には強いが、生育が遅く高温乾燥に弱い。
ゴルフ場のフェアウェイに使われている。
踏圧に強い。
寒地型の中でも高温に強い。
暖地でも育ち、乾燥にも強く丈夫な芝。
競技場の芝など幅広い施設でも使用される。
成長が早く寿命が短い。
低湿に強く、冬の葉色がきれい。
踏圧に弱い。
フランスやイギリスなどのヨーロッパの競馬場も洋芝です。
ヨーロッパで競馬が盛んなフランス・イギリスなどは北海道よりも北に位置します。
凱旋門賞(芝2400m)の走破時計は、過去のレースで良馬場で行われた中で一番速いタイムを引っ張り出してきても、2分23秒61(レコード)です。
しかしこれは例年のロンシャン競馬場ではなくシャンティ競馬場で行われたものです。
ロンシャン競馬場で行われたものだとコース形態やペースなどの違いはありますが、良馬場でも平均的に2分25~28秒かかっているのです。
日本の場合だと、2018年のジャパンカップ(GⅠ芝2400m)で記録した、2分20秒6です。
これは芝2400mの世界レコードなのですが、一概に世界で一番強い馬と言えないのはスピードが出やすい芝(野芝)と出にくい芝(洋芝)の違いもあるのです。
札幌・函館以外も実は洋芝を使っている
競馬をやっている方の中にも、「洋芝=函館・札幌」というイメージを持っている人は少なくないでしょう。
しかし、他の競馬場にも洋芝は使われているのです。
「オーバーシード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
【オーバーシードとは?】
冬場に枯れる夏芝に、冬芝の種をまき、一年中緑の芝生を維持する管理方法
野芝と呼ばれる温暖気候型の芝は、冬は葉が枯れて黄色みがかってきます。
そのため、1年通して常に緑の芝生を保てるように、函館・札幌にも使用されているケンタッキーブルーグラス・トールフェスク・ペレニアルライグラスの種子を散布して、季節ごとにバランスを調整していのいました。
しかし、連続して競馬を開催すると芝生がえぐれてはがれ、時計のかかる馬場になるケースも少なくありませんでした。
その問題を解決したのが、現在函館・札幌以外で使用されている「エクイターフ」と呼ばれる品種です。
1999年頃から、日本中央競馬会・競走馬総合研究所が研究・開発を行い、2008年に第一号が福島競馬場に導入されました。
エクイターフは、直訳すると「馬のための芝生」という意味で、天然芝の一種です。
それまでの品種より成長も早く、クッション性に優れていると言われています。
これにより、開催が進んでも馬場が荒れにくくなってきています。
クッション性に優れていると言われているエクイターフですが、実際に採用された後に起きている事実として「馬場の高速化」があげられます。
実際、2010年のNHKマイルカップでは、ダノンシャンティが1分31秒4のレコード。
2011年の天皇賞秋では、トーセンジョーダンがそれまでのレコードタイムを1.1秒縮める1分56秒1という走破時計。
その後、故障発生する馬が相次いだことから、競馬関係者からは「逆に馬に負担をかけている」という声もあがりました。
洋芝に強い血統
「洋芝の鬼」と言われたエリモハリアーをご存じでしょうか?
函館記念(GⅢ)を3連覇した馬です。
10歳までJRAで競走馬として走っていたため生涯成績は、63戦9勝。
未勝利の勝ち上がりが札幌、2勝クラスの勝ち上がりも札幌、3勝クラスながらオープンを勝ったのが函館と、全9勝の内、札幌2勝・函館4勝。
実に勝ち星の7割弱をオール洋芝の函館・札幌で挙げている洋芝巧者っぷりです。
オープンに上がってから、函館・札幌以外は凡走をしていたことからも洋芝巧者だったことがうかがい知れます。
自身も12戦目の凱旋門賞で3着入線(結果失格)で初めて連を外したディープインパクト。
産駒も洋芝が苦手なイメージがあるかもしれません。
しかし、実際はどうでしょう?
上記が産駒の全競馬場の成績です。
上記は、各競馬場ごとのディープインパクト産駒の成績です。
赤枠内は、札幌競馬場での成績です。
勝率・連対率・3着内率はやや落ちますが、それほど苦にしているわけではなさそうです。
極端に苦手にしているわけではありませんが、強いて言えば函館がやや成績が落ちるのが気になると言えば気になるでしょう。
『競馬の血統の勉強で本を選ぶなら、まずはこの1冊』の記事でも紹介した亀谷敬正氏の著書によれば、洋芝が向く血統は4つある。
☑欧州型・キングマンボ系:キングカメハメハ
☑欧州型・ダンチヒ系:ハービンジャー
☑日本型で母系に欧州型を持つサンデー系:ダイワメジャー
☑日本型のTサンデー系:ステイゴールド、ハーツクライ、マンハッタンカフェ
まとめ
最後にこの記事をまとめます。
・函館・札幌など寒冷地は気候上、野芝が育たないのでオール洋芝
・他の競馬場も秋~春の開催にかけては野芝+洋芝のオーバーシード(野芝:洋芝の割合は時期や競馬場によって異なる)
・洋芝巧者は存在する
・洋芝巧者でなくても、能力でカバーしてしまうかもしれない
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